【イベントレポート】歴史と自然をめぐるひろのオンライントリップ〜大野編〜
11月26日(金)にオンラインイベント『歴史と自然をめぐるひろのオンライントリップ〜大野編〜』を開催しました。 今回は大野の街道を巡りながら、この土地にまつわる歴史や文化を「街道」をテーマに洋野町地域おこし協力隊・梅林寺さんの解説とともにお届けしました。当日は7名が参加し、特産品付きチケットを購入してくれた方には大野の特産品をご用意しました。
歴史と自然をめぐるひろのオンライントリップ 大野編
洋野町は岩手県沿岸の最北端に位置し、平成18年に旧種市町と旧大野村が合併して誕生しました。大野地区は高原が広がる自然豊かな場所です。江戸時代、大野は八戸南部藩の久慈街道の一部でした。現在でも街道の名残で曲がりくねった道がみられます。かつては「大野六鉄山」といわれるほど有名な鉄山で栄えた宿場町で、最盛期には1500人ほどの鉄山関係の従事者がいたといわれています。八戸南部藩の経済及び文化の中心地としても栄えた地域でした。
今回は8ヶ所のルートを巡りました。その中でも3ヶ所をこちらで紹介します。
大野ふるさと物産館
1階はバスの待合室、2階は産直と食堂になっています。近くには小学校やスーパー役場などもあり、大野の中心地になっている場所です。
こちらの食堂では郷土料理の「ひっつみ定食」がいただけます。大野木工の器が使われていて温かみのある定食となっています。他にも物産館の近くにある「梅乃屋」さんのカレー、「ちどり食堂」の親子丼の紹介がありました。
続いて大野のまちなか紹介に移りました。古い建物が残っていて風情のある街並みとなっています。消防屯所などは屯所とは思えない綺麗な外観となっていました。また200年続く西大野商店というお店もあります。西大野商店さんの蔵の中から秘伝書が見つかったそうで、夏には江戸時代から復刻させたお酒「国光正宗」が販売されました。
古くから大野は南北から街道が交わる位置にあり、交通の要所として機能していました。江戸時代、鉄山の経営が始まったことから街道が賑わうようになりました。最盛期には1500人もの人々が鉄山に関連して働いていたそうです。一方で治安の悪化に繋がったり、過酷な労働から逃げ出す人もいたという側面もありました。
番外編として、電柱が橋になっているため電柱の上を歩けるという面白スポットの紹介もありました。
鳴雷(なるいかづち)神社
この神社は雷様をお祀りしており、1758年に現在のような神社の形になりました。大野は昔から雷が多い地域であり、雷様を暮らしの神様としてお祀りしているそうです。
人間は普段の生活で「穢れ」という悪いものが付いてしまうという考えがあり、「自払い」という自分で自分を清めるということを行うそうです。
神社内には立派な大木が並び、秋には綺麗な銀杏が見られます。
毎年8月には鳴雷神社例大祭が行われています。去年と今年はコロナウイルスの影響で行うことが出来ませんでしたが、例大祭の様子がfumotoのYouTubeに載っていますので興味のある方はご覧ください。
鳴雷神社や西大野商店の近くには1838年に日払い処と呼ばれる鉄山の支配人のいる事務所が置かれました。日払い処が置かれたことで、鉄の鋳造化工業や鉄などを運ぶ運送工業、鉄を作るための炭焼き産業が栄えました。そして全国から集まった人たちの文化が合わさってこの例大祭が作られたそうです。
おおのキャンパス
様々な施設があり、大野のシンボル的な場所になっています。
おおのキャンパスは昭和54年、出稼ぎ対策に取り組む1人の職人さんと工業デザイナーである秋岡芳夫先生の出会いから始まります。当時の大野村は人口7300人のうち1300人もの人が出稼ぎを強いられるほど村に根付いた産業がありませんでした。「この場所に何か産業を生み出して、村の出稼ぎ対策に出来ないだろうか」と考え、秋岡先生が「一人一芸の村計画」を提唱しました。「大野の人たちが職種に従い一人ずつ新しい工夫をすることによって村全体を活性化させる」という計画であったそうです。例えば当時は木材や牛乳などをタダ同然で売り出していたけれど、一工夫、一加工施して付加価値をつけて売り出すなどしました。そういった考えが少しずつ大きくなり、今のおおのキャンパスの形に繋がりました。
おおのキャンパスには子どもたちが遊べるような芝生が広がり、ヤギやうさぎなどと触れ合える動物ふれあい館、産直や木工体験ができる施設、大野木工が購入できるデザインセンターなどがあります。
続いておおのキャンパスでいただくことのできるグルメ紹介がありました。まず1番人気の「赤鶏ラーメン」。洋野町育ちの純和鶏と野菜を煮込んだ味噌味のラーメンです。器も大野木工のものになります。またミルクソフトクリームも1つ300円で販売しています。
おおのキャンパスから徒歩15分の場所には「大野海成段丘」があります。そこには「ひろのまきば天文台」があり、綺麗な段丘の眺めを見渡すことが出来ます。夜には星空を見渡すことができ、平成19年には日本一の星空観察適地に選ばれました。今の時期には肉眼で天の川が見ることができます。
質疑応答のコーナーでは、今後街中で歴史を利活用をしていくところはありますかとの質問がありました。
小さい街では歴史を残していくのは難しく、元々やっていた方はいらっしゃいましたが具体的に進める形には至っていません。今は梅林寺さんがこのように活動してくれており、新しい視点から伝えていければという段階になっています。それによって地域の子どもたちのアイデンティティになればいいなと思います。
案内人
梅林寺 梨音さん
2021年4月より洋野町地域おこし協力隊(歴史を通じた地域貢献事業推進員)として活動中。
神奈川県横浜市出身。大学時代は民俗学や地誌学を専攻。
趣味は散歩 、読書、登山、描画、古文書解読…
(2021/12/04 レポート 高瀬未希)