ひろのの栞

町と関わりたい人との繋がりをつくる

洋野町で新たに始動した官民協働のヒロノジン(関係人口)増加プロジェクト。その概要や背景、今後の思いについて、企画した長根さんにお話を伺いました。お相手は、プロジェクトの主体となる民間団体fumoto代表の大原さんです。

 

ヒロノジン(関係人口)増加プロジェクトとは

長根さん:「一言でいうと、WebアプリやSNSなどを活用して関係人口を増やし、そうした人たちのコミュニティを作るプロジェクトです。観光や仕事で訪れる人を交流人口、移住定住している人を定住人口と呼んでいますが、関係人口はその中間の位置付けで、町に継続的に関わる人たちのことです」

大原さん:「観光以上、移住未満といわれる人たちですね」

長根さん:「はい。関係人口は地方創生のキーワードといわれています。移住ほど重く関わる必要はなく、かといって一過性の軽い関係でもない、洋野町に愛着・関心のある人たち。つまり洋野町のファンになってもらう。幅広い関係性をつくることで、結果として交流人口がさらに増えたり、関係人口の中から定住する人が出てきたりするかもしれません。
このプロジェクトでは、洋野町と繋がりたいと思っている人にひろのの栞” に登録してもらうことで、町と登録者との連絡体制をつくり、コミュニケーションツールとして活用していきたいと思っています。SNSでの情報発信や情報誌等の発送も行っていく予定です」

数年前から原案を温めていたという長根さん。国が地方創生に力を入れ始めたこともあり、周りに相談したところ、より具体的な案が出て徐々に事業として実現していくことになりました。

 

プロジェクトが立ち上がった背景

当時長根さんはタウンプロモーション(町のPR活動)の事業に関わっていましたが、首都圏でのPRイベント後、洋野町を知ってもらった人と繋がる手段に乏しいことを課題に感じていました。
情報を発信しても届きにくい現状と、町に関心を持っても繋がる手段がないことで町への興味・関心が薄れていくことに問題意識を抱いていたといいます。

長根さん:「それと同時に、洋野町では移住定住の支援も行っていますが、全く町を知らない人にアプローチする難しさも感じていました。ある程度町を知っている人の方が効果的なのではと」

町では、毎年進学や就職で若年層が首都圏へ出ていく現状がありました。RESAS(地域経済分析システム)のデータによると、年間100~200人程度が転出し、この20年でトータル数千人規模の転出者が出ているようです。

長根さん:「家族なども含めるとかなりの人口だと思います。そうした人たちと繋がることができたら、と考えました。元々町にも愛着がある人たちだと思うので、一度繋がりができれば、町のものを買いたいと思っている人への案内や、戻ってきたいと思っている人への情報提供もできますし、町と関係人口との良い関係性が築けるかなと」

大原さん:「ゆくゆくは対象を広げ、地域づくりに興味がある人たちとも繋がれたらと思っています。自分がそうだったように、地方に関心がある人は増えていると思うんです」

長根さん:「そうですね。理想は、関係人口のコミュニティが自発的に盛り上がってくれることです。自発的に町のイベントに参加したり、もしくはコミュニティ内でイベントを計画してくれたり。そうすることでさらに繋がりができてくると思っています」

大原さん:「そのための継続性と、受け皿をつくることが大事ですよね。他の団体や企業と、関係人口を繋ぐハブになること。これが自分の役割かなと思っています」

長根さんは観光、雇用、移住の相談窓口が分かれている現状にも言及。関係人口案内所を作り、訪問者に対して、観光から移住定住までワンストップで相談できる窓口をつくりたいといいます。

長根さん:「大原さんにはその窓口を担っていただきたいと期待しています」

また、現在は新型コロナウイルスの影響で難しい側面もありますが、今後は首都圏でサテライト案内所を設置し、首都圏でのコミュニティづくりや、移住や観光の案内もしていきたいそうです。

 

知ることで変わった町のイメージ

企画課で広報担当をしていたこともある長根さん。就職前は洋野町に対して “どこにでもある普通の田舎” というイメージを持っていましたが、取材を通じて多くの人に会うことでその認識は変わっていきました。

長根さん:「海も山もあって、面白い人もたくさんいる。一面的ではなく多面性のある面白い町だと気付きました。普通に住んでいると特定の人にしか会わないので、多様性に気付けていないだけで。もっと色々な人に会えば、それだけ多くの考え方があって面白いことに気付くと思うんです」

外のことを知りたいという気持ちで大学時代に一度は町を離れましたが、東京に住むつもりはなく、元々地元に戻ることも考えていたそう。自身の幼少期を振り返ってこんな話もしてくれました。

長根さん:「昔は商店街にお店もたくさんあって、お祭りの時なんかも屋台がたくさん並んでて。お盆には親戚や同級生もみんな帰って来てたから、人口の3倍くらいの人で溢れていました。今は少し寂しくなりましたね……。町のイベントやお祭りに参加したい人がいれば、気軽に参加できる環境を整えたいですね。関係人口案内所がそうした受け皿になれれば町の活性化にも繋がると思います」

photo:Toshiyuki Sugai

最後に長根さんは、関係人口になったから何かしなければならないわけではなく、それぞれの距離感で関わってくれればと語ってくれました。もちろん積極的に町に来てくれることは大歓迎ですが、町と色々な関わり方ができ、それを受け入れることができる町になることが理想だそうです。

関われる範囲で、無理なく自然な形で愛着のある町と繋がることができる。まずは洋野町を知るところから、旅を始めてみませんか。
今後このサイトではインタビュー形式で洋野町のヒト・モノ・コトを発信していきます。

 

長根洋一(ながね よういち)
1979年生まれ。洋野町大野地区出身。
高校卒業後、首都圏の大学へ。大学時代は発展途上国を中心に10カ国以上旅する。
2007年にUターンし、合併した洋野町の一期生として洋野町役場入庁。
町民生活課、介護サービス課、水産商工課、企画課、総合戦略推進室に在籍し、
2017年度から地方創生担当に。
旅行の計画を立てることと、バスケ観戦が趣味。
好物ははまなす亭のほやラーメン。美味しさの秘密も知っている。

大原圭太郎(おおはら けいたろう)
1980年生まれ。宮城県仙台市出身。
2016年10月洋野町地域おこし協力隊着任。
3年の任期を経て2019年9月一般社団法人fumotoを設立し、代表理事に就任。
最近のマイブームは5歳の娘さんとプロゴルファー猿のアニメを見ること。

※役職は2021年3月現在のものです。
※RESASとは……Regional Economy and Society Analyzing Systemの略。内閣府のまち・ひと・しごと創生本部が運用している、産業構造や人口動態、人の流れなどに関する官民のいわゆるビックデータを集約し、可視化を試みるシステムである。

 

(2021/02/12 取材 後藤暢子)